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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页
眼八の誘いにツリこまれて、大勘の内弟子は、うっかり、
「ア、そういえばネ、客人」
と、しゃべりだした。
「似た話があるぜ」
「ある? ふム」
「もう一月あまりも前なんで、すっかり忘れていたけれど、ちょうど、客人のいった頃にあたるよ。小雨がソボソボ降っていた、暴風あがりからズッと降り通しで、部屋の者も仕事がなしで、早く床についた晩なのさ」
へたな言葉をさし挟んで、相手のしゃべる図をはずすまいと、眼八、大事そうにソッとひとつうなずいた。
「……とネ、宵の五刻ごろ、トントンと表をたたく人があるんだ。おらあ親方の瘤みたいな肩を揉ませられていたので、イイ機だと思ったから、親方、誰か表に客人でございますヨ、そういって顔を覗くと、ふム、分っているとうなずいて、部屋の奴アみんな寝たか、とこう聞くんでございます」
「なるほど」
「ヘエというと、親方は、いずれ今頃ウロついてくる客は、旅人だろうから、あっちの小屋へ行燈を入れておけ、そして、後はおれが見てやるから、てめえは床に着くがイイ。そんな優しい親方でもないのに、妙だナと思いながら、いわれた通り――今お前さんのいるこの部屋へ灯を入れていると、そこへ親方が、ふたりの客を外からここへ案内してきました」