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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

「冗談いうない、落した所を知っているくらいなら、何も、わざわざ他人に拾われやしねえ」

「そうだろう。じゃ教えてやるが、実は、あれや御城下の刀研ぎ、大黒宗理の店先で、お前が頼み刀をうけ取っている間に、道具箱からぬけだしていたんだ。なにも、平鑿に足が生えたわけじゃねえから、無論、おれの指先が、黙ってお預かりと出かけたんだが……」

源次は静かに顔色をかえていた。

その時、宗理の店で、背中合せに掛けていた男の姿を思い浮かべて、かれは、しまった! と臍をかんでいるらしかった。

眼八は相手の眸を読みながら、

「オイオイ、駄目だ駄目だ、逃げようたって逃がしゃあしねえ。徳島奉行の御配下で、釘抜きの眼八といわれている鬼手先だ。その釘抜きが噛みついてしまった以上は、めったにここをズラからすものか」

「野郎!」

と、源次は片足ひいて、

「じゃてめえは、旅人といっていたが、徳島から潜りこんできやがった岡ッ引だな!」

「神妙にしろッ」

「やかましいやいッ」

手拭にくるんでいた平鑿が、風を切って眼八の脳天に跳びかかってきた。

「ふざけやがって!」と、眼八は身をねじって、鑿の腕くびを引っつかみ、デンと投げ業をかけたが利かず、腰をくだいて、ふたつの体、よじれながら横ざまにぶっ倒れた。