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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

家臣たちは頑として老人の意思を拒んだ。そして無理にひと間へつれ込んで錠口を隔ててしまうと、そこへ竹屋三位卿が、おそろしく青ざめた顔色をして通った。

「――殿のおことばを伝えます」

こう言い放して厳格にかまえた。

「…………」

老人は不平にみなぎっていたが、とにかく上意を聞くべく、態度を改めて坐りなおる。

「高木龍耳軒!」

三位卿は読みあげるようにひと息で言った。

「――其方儀、藩の御法を無視し、おのれ一個の我意をもって、弦之丞を逃がしたとは不都合至極、その上御前をおそれぬ暴言、死を与うべきやつなれど、乱心であろうとありがたい御斟酌、即刻、川島へひきとって、後のお沙汰を待っておれ」

それに対して、老人が何か叫ぼうとするまに、有村は身をかわすように、フイと部屋の外へ出てしまった。

大手の玄関へ出てみると、そこにも若侍の多くが右往左往して騒いでいた。

すでに盟約のある公卿大名の密使たちと、手筈をすませて、この秋、将軍家が日光参廟の機会に、大事をあげようと阿波守の目算がすっかりついていたところ――。

そこへ突然、龍耳老人が登城したのであった。目通りに出ると面をおかして、大事の不成功を予言した。