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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页
と、唾を吐く。
「はい、大きにお世話さま」
孫兵衛を楯にしているので、お品はツンと強くなる。それに、さっきのこともあるので、こういってやった。
「売女だろうと、あなた方に、買って下さいとは申しませんよ。お十夜さんは私の情人、地べたで話をしていようと、屋根へ上がって相談をしようとも、お他人様のご心配はいらないでしょう」
こういうのが、いわゆる悪女の深情けと称するのであろうと、かなり面皮の厚い孫兵衛も、ふたりの手前、処女みたいに赤くなったが、「う……なに、今少々、解せぬ女について、問い糺しているところなんだ」と、テレた顔をまぎらわせる。それを周馬は意地悪く、
「ほ、解せぬ女が、どこへ」
と追求して行った。
「誰といったっけなあ、今、川長へ入って行ったやつは?」
「あれは、元あそこの店に、仲居をしていたお吉さんという女」
「仲居がどうしたと?」
なにを、ばかばかしいというふうに、一角が嘲笑するので、孫兵衛はいよいよ何かあの女を意味づけなければならなくなった。で、今の挙動を箇条にして、なおお品を問いつめてゆくと、偶然、かれの口から、そのお吉が、目明し万吉の女房であるということが洩れた。