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う
鵜
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页
それでも量は三合ほどであるが、その夜は殆んど定量の倍ちかく飲み、しきりに(段平にはわけのわからない)独り言を云った。
「ばか者」と彼はふいにどなった、「だらしがないぞ」
段平は眼を剥いた。
「わしでごぜえますか」と段平は云った。
半三郎は段平を見て、夢からさめたような眼つきをし、黙って立ちあがった。
その翌日、半三郎は家にこもっていた。しかし次の朝には段平に餌掘りを命じ、ひどくそわそわとでかけていった。淵へおりてゆくと、女が待っていた。
女は断崖の下の、日蔭になったところにいた。やはり緋色の二布を腰に巻いただけの裸で、いま川からあがったところとみえ、肌も濡れているし、足もとの岩にも水が溜まっていた。――断崖をおりるまで気がつかなかった半三郎は、女を認めるとさっと赤くなった。すると女も赤くなり、裸の胸を両手で隠すようにした。半三郎は眼をそらした。
「もう泳いだのか」と半三郎が云った、「まだ水が冷たいじゃないか」
「どうして昨日いらっしゃらなかったの」
女の声はふるえていた。激しい感情を抑えるためにふるえるようであり、怒りのためにふるえるようでもあった。半三郎は振向いてみた。