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う

鵜

山本 周五郎

「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页

青空文庫

五

と半三郎は云った、「こんな状態はもうたくさんだ、ただこ、――いっしょに食事をするか」

「ええ、そうしましょう」

「いま此処できめてくれ、どこがいい」

ただこは顔をあげて彼を見た。

五

その翌日の午、二人は源ノ森の「蜂屋」という料理茶屋で逢った。

そこは城下町の西に当り、北野神社の境内に続いている。うしろを深い杉の森に囲まれ、千の池とよばれる池を前にして、掛け茶屋や料亭が並んでいるが、「蜂屋」はそのなかでもっとも構えが大きく、桟橋に屋根船なども繋いであった。

ただこは先に来て待っていた。それは別棟になった数寄屋ふうの離れで、二方に忍冬の絡まった四つ目垣がまわしてあった。

ただこはすっきりと痩せてみえた。藍色のぼかしに菖蒲の模様の帷子を着、白地にやはり菖蒲を染めた帯をしめていた。化粧はしていないが、日に焦けた顔がいつもより小さく、爽やかにひきしまった感じで、帯をしめたためか、腰も細く、背丈がすっきりと高くみえた。

「そんなにごらんにならないで」とただこは眼のまわりを赤くした、「こんな恰好、――似あわないでしょ」

「きれいだ」と半三郎が云った、「きれいだよ」

「もう、ごらんにならないで」