轻松读懂日语经典作品
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う
鵜
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页
そのとき魚が跳ねた。淵から三段ばかり上に棚瀬があり、水が白く泡立って落ちている。魚はその棚瀬で跳ねたらしい。半三郎が眼をやると、また一尾、かなり大きな魚が跳ねて、棚瀬の向うへ姿を消した。
「鮠かな」と彼は云った、「川鱒かもしれない、うん、いるんだな」
半三郎の見込に狂いはなかった。半刻ばかりのあいだに、彼は二尾の大きな鮠と山女魚を三尾あげた。彼は釣りあげた魚をすぐ水に放してしまう、魚を片手でそっと握り、釣鈎を外し、ちょっとその魚の顔を眺めてから、川の中へ投げ返すのであった。
午後四時ごろまでに、半三郎は三十二尾釣って放し、満足して家へ帰った。仲間の段平は、旦那が手ぶらで帰ったので同情した。
「あの川にはいるんですがな」と段平は云った、「きっと場所がいけなかったんですな」
半三郎はなにも云わなかった。
翌日もでかけていった。爼板岩へ腰をおろすとき、彼はまたその岩をそっと叩いた。口ではなにも云わなかったが、いかにも親しげな「よう、きょうだい」とでもいうふうな叩きかたであった。その日は午までに十八尾釣れた。鮠、山女魚、それに鮎もあった。釣鈎を口から外すとき、魚たちは彼の手の中で活き活きと暴れ、渓谷の水の冷たさと、つよい水苔の匂いをふりまいた。