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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
「そうじゃないか熊城君、有名なランジイ(仏蘭西(フランス)の暗号解読家)の言葉に、秘密記法の最終は同字整理にあり――というのがあるからね。そこで、その同字整理を紋章のない石に試みて、sとs、reとle、stとstを除いてみた。すると、それが Cone(松毬)という一字に、変ってしまったのだよ。ところが、その松毬というのが、寝台の天蓋にある頂飾にあって、それがまた、薄気味悪い道化師なんだがね」とそれから帷幕の中に入って、蒲団の上に、卓子や椅子を一つ一つ積み重ねていった。そうして、最後に立箪笥が載せられたとき、検事と熊城はハッとして息を嚥んだ。と云うのは、松毬の形をしたその頂飾が口を開いて、そこからサラサラと、白い粉末が溢れ出たからであった。すると、法水の舌が、黒死館の過去を暗澹とさせたところの、三つの変死事件に触れていった。
「これが、暗黒の神秘――黒死館の悪霊さ。それを修辞学的に云えば、さしずめ中世異端の弄技物とでも云うところだろうがね。しかし、その装置の内容たるや、過去の三変死事件が、それぞれ同衾中に起ったのを考えれば判るだろう。つまり、二人以上の重量が法度で、それが加わると、松毬の頂飾が開いて、この粉末が溢れ出すのだよ。