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あすなろう

あすなろう

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页

青空文庫

男のほうを、すばやい眼つきでぬすみ見していた。――三人組と二人組の客たちは、どちらも相当に酔って、高ごえで話したり笑ったり、ときには唄をうたったりするので、こっちの二人はしばしば話を遮られた。

「おれがこんな人間になったのも女のためなんだ」と若いほうが云っていた、「男ってものは赤ん坊からだんだん育ってゆくだろう、五つの年には五つ、十になれば十ってぐあいにさ、ところが女はそうじゃあねえ、女ってやつは立ち歩きを始めるともう女になっちまう」

「男だって生れたときから男だろう」

「そうじゃあねえんだ」若いほうはそこからうまい言葉をみつけだそうとでもするように、持っている盃の中をじっとみつめた、「いろけづく、――でもねえな」と彼は首を捻ってから、考え考え云った、「つまりこんなふうなんだ、男にはねえが、女にはおませな子っていうのがあるだろう、女の子はこんなちっちゃなじぶんからへんにしなを作ったり、横眼で人を見たりすましたりするが、おませになるともうおとなとおんなじだ、いろっぽいところも小意地の悪いところも、男にちょっかいをだすところまでおんなじなんだ」