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このにぎりめし
この握りめし
岸田 国士
「日光 第三巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,649 字 · 27 页
「誰かがやらにやなるめえ」
「おい、おい、やりたい奴にやらしたらどうだ。おめえはだぞ、そんなことより、ほかにやりたいことがあつただろう?」
「いやなこと言うなよ。人間には出来ることと出来んこととがあるでな。おれにはな、そうたんと出来そうなことはねえ。せいぜい、兵隊で鍛えたからだでもつてな、弱いものを助けたかつたんだ。世の中の邪魔になるものを取りのけたかつたんだ」
「えらそうにいやがる。おめえらは、そう言いながら、知らず知らず、強い者の味方をし、世の中の進歩の邪魔をしてるのに気がつかねえのか」
「そういう奴もたしかにいた。そういう場合もないとはいわん。しかしだ、それは、どんな制度にも弊害はつきものだつてこととおんなじだぜ。近頃は軍人の悪口を云いさえすれば、いつぱし世間に通用するように思つてる奴がいるが、どんな文明国にだつてちやんと軍人はいるんだ。進歩の親玉みてえに己惚れてる国が、ちやんと、警察を抱えてござるからな」
「そんな話をしてるんじやねえよ。おめえ自身のことを問題にしてるんだ。おめえは、評判のいゝお巡りだそうだが、お巡りなんてものは、憎まれ役になるのが当り前だと、おれは思うんだ。