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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
「うそ言わないでさ」
「うそだもんか、僕の方でほしい位だ」
「じょうだん言わないで、ほんとに――あっちでもこっちでも、かすを食うんで、僕悲観しちゃったあ」
「それは気の毒だな、けれど、僕も最近ここへ疎開してきたばかりで、米や麦は愚かなこと、汁の実にする青いものさえ不足しているので、困っている最中だ」
「そうですか、それは見損なった」
青年は、こういったからもう帰るのかと思っていると、なれなれしく、私のかけている縁側へ、私と並んで腰を下ろした。そして、古い国民服の隠しから、短く喫い残った巻煙草をだして火をつけた。
「煙草も、貴いですね」
というのである。
「おじさんなんぞ、畑のまん中に住んでいて食べものが足りないなんて、へんですね」
「不思議なことはないのさ、足りないのは都会ばかりじゃないよ」
「実はね、私は徴用で工場へ勤めているのですけれど、根は下駄屋なんですよ。きょうは電休日ですから、食いもの探しに出かけたわけですよ。自分でこしらえた下駄をぶら下げて――」
「ふふん」
「下駄と食いものと交換して貰うという算段なんです――この近所に、誰か下駄の入用の人はありませんかね」