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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
はて、これは只事にあらず、と考えたのは寄せ手の大将である。妖魔の仕業に違いないと判断して、部下の侍に命じ、蟇目の矢を射させたところ、果たせるかな城壁の大軍は、掻き消すように、消えてなくなり再び姿を現わさない。
そこで、とうとう厩橋城は陥ってしまったのだが、厩橋城下の人々はこの奇蹟について、あれは上州邑楽郡六郷村にある茂林寺の分福茶釜狸が、応援にきたのであるといっている。
茶釜狸と、厩橋城とどういう関係があったのか、それについて何も知ることができない。だが、これは上州長脇差の本領を現わして、厩橋城内に棲んでいる狸の運命危うしと見て、茶釜狸が、おっとり刀で飛びつけた義侠心であるかも知れぬ。
九
ある年の冬、厩橋城下に失火があった。折柄、上州名物の空っ風が吹きすさんで、火は八方にひろがった。町の人々は、必死となって防火に努めたけれど、手がつけられない。傷者、死者まで出る始末で、今はもう手を拱いて厩橋城下の全滅を傍観するよりほかに、手の施しようのない仕儀となった。
これを、霊感で知って驚いたのは、茂林寺の茶釜狸である。
元来、茂林寺の狸は、今の上越線の線路から一里程離れた榛名山麓湯の上村付近の出身であるとされているのであるけれど、厩橋城下の人々は、厩橋城内出身であると信じている。