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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

猟師親子の腕前に感服しながら、仔細に熊体の四肢に眼を移して行くと、四本とも足首から先が切り取ってある。

おいおい、熊の足の掌は素敵な美味ときいているが、足首から先を切り取ってしまっては、値打ちが半分もないじゃないか、と私がいうと猟師は、さようでがんす。熊の掌は、からだのどこよりも一番腐りやすいところだから、山で足首だけを鉈で切り取り、鍋に入れて親子で煮て食っちまいましたんですが。と、答えるのである。やはりうまかったと言う。

そこで義弟は、時値の半値で買い取り毛皮はいまなお医局の一室を飾っているが、そのとき熊肉のすき焼きをこしらえて二人でたらふく食ったのである。加役に根深と芹を刻んで鍋に入れ、少々味噌を落として汁を作り、それから賽の目に切った熊の肉を投じ、ふつふつと煮立てて口へなげ込んだところ、まことに濃澹な珍饌に、驚いたのであった。

土に親しみ、穴を住まいとする獣には、土の香が肉に沁み込んでいるものと見える。その、土の香を含む賽の目の肉塊がほんのりと私の嗅覚に漂って、野獣を炊く感を一層深くさせる。牛にも馬にも豚にも、肉に土の香はない。鴨や雉子の肉には土臭があるが、家鶏や七面鳥に土臭がないのと同じだ。