轻松读懂日语经典作品
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ちゃん
ちゃん
山本 周五郎
「週刊朝日別冊陽春特別読物号」朝日新聞社、1958(昭和33)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,377 字 · 45 页
ほんとだぜ、重吉は心の中で云った。こんな世の中はくそくらえだ。生きている甲斐なんかありゃしねえ、まじめに仕事いっぽん、脇眼もふらずに働いていても、おれのようにぶまな人間は一生うだつがあがらねえ。まじめであればあるほど、人に軽く扱われ、ばかにされ、貧乏に追いまくられ、そして女房子にまで苦労させる。
――たくさんだ、もうたくさんだ。
こんな世の中はもうまっぴらだ、と重吉は思った。
「たん」とお芳が云った、「水持って来ようか」
お芳はじっと父親を見ていて、本能的に哀れを感じたらしい。咎めるような眼つきが、いまは(三つという年にもかかわらず)憐れむような色に変っていた。三つでも女の子は女の子であり、貧しい生活の中で母親や兄や姉たちの、父に対するいたわりや気遣いを見たり聞いたりしているためだろう。その顔つきにはひどくおとなびた、まじめくさった表情があらわれていた。
「いいよ」重吉は眼をそらした、「自分でいって飲んで来る、おまえ遊びにゆかないのか」
「いかない」とお芳は云った、「たんの番をしていなって、帰るまで番してなって、かあたんが云ったんだもんさ」
重吉は立って勝手へゆき、水瓶からじかに柄杓で三杯水を飲んだ。