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つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页
それだけはどうしてもはっきりさせなければならないだろう。……だがそうだろうか、二人に逢う機会を与えないで、このままの状態で、時間が解決して呉れるのを待ってもよくはないか。
燕が脇玄関に巣をかけた日から、高雄はこのように思い惑い、苦しい悩ましい時を送った。だがそれからちょうど四日めに、とつぜん思いがけない出来事が起った。
その日は下城のあとで役所の支配に招かれていた。正満文之進というその支配は四十三になるが、結婚して十四年めに初めて男の子を儲けた。
「まるで大将首を拾ったような気持でね」
彼は相手構わずそう云って喜んだ。その出生祝いに招かれたのであるが、老職も三人ほど来て、酒宴は思いのほか長くなった。高雄は上役の人たちのあとから辞去したので、正満家の門を出たのは十時に近かった。……正満の家は三条丸にある、そこから下北丸の自宅まで帰るには、大手道と的場跡をぬけるのと二つある、的場跡の脇をぬけるのは裏道だが、そのほうが早い。下僕は先に帰らせたので、高雄は自分で提燈を持って、その裏道を帰途についた。
的場跡は二万坪ばかりの広さで、今では石や材木の置場に使われている。