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つばくろ

つばくろ

山本 周五郎

「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页

青空文庫

六

亡くなった母の実家の青野では、実際の内情はもちろん知らなかったが、高雄が不自由だろうというので、青野の遠縁に当る者を手伝いによこした。……勝江という名で二十六歳になり、いちど結婚したが、不縁になって戻ったのだという。それにしては少しも暗い翳のない、解放的なひどく明るい性質で、一日じゅうどこかしらで笑い声の聞えないことはないというふうだった。

「大さん、さあ小母さんに乗んなさい、お馬どうどうしましょう、ほら、走るわよ」

四ん這いになって、大助を背中に乗せてばたばた騒ぐ。来る早々からそんなぐあいで、大助もたちまち懐いていった。

六

時は経っていったが、高雄の傷心は少しも軽くならなかった。

おいちが自分にとっていかに大事な者であったかということを、彼はますます強く、ますます深く感ずるばかりだった。嫉妬もあるかもしれない、慥かに、森とおいちとをひとつにした想像は、呼吸を止められ、胸を圧潰されるような苦しさだった。心理的であるよりも遙かに直接な、肉体的な苦悶であった。……けれども、それにも増して、おいちがどんなに大事な存在であったかということ、彼女が自分を去ってからそれがわかったこと、そうして、それほど大事であったおいちを、自分がなおざりにしてきたことなど、こういう想いがいつも頭を離れず、とりかえし難い罪のように彼を