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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

弥六はこう云って悦喜した。

その晩はまえ祝い、お染はすぐさま幽霊の募集にかかり、入念に物色して六人の男女を雇い入れた。男二人、爺さんと婆さん、娘二人という顔触れである。これだけ抱えていれば、まず大抵の註文は引受けられるだろうが、お染はこれにはずいぶん苦心したと云った。……幽霊はいくらでもいるけれど、いざ商売となると、誰でもいいというわけにはいかない。まず正直でおとなしく、凄みがあって眼鼻だちのいい者、これだけの条件は必要だった。

「だってそうでしょう、正直者でないと客と馴れ合ったり、出先で間違いを起す心配があるし、気の荒い者だと組合なんか作って、すぐに賃上げストなんか始めるわよ」お染はこう説明した。

「縹緻だってそうよ、先方へいってうらめしやをやるのに、おかめやひょっとこみたいな顔じゃあ、相手は怖がるどころかふきだしちまうわ」

実にゆき届いたものである。また募集に当って困ったのは、例の四谷怪談のお岩さんとか船弁慶でお馴染みの平知盛さんとか由比正雪さんとか皿屋敷のお菊さんなどというのが来て、雇ってくれと強引にねばられたそうである。

「へえー、そんな連中がまだ宙に迷ってるのか」