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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

……かくて、ゆうれい貸屋は、陰々と開業された。爺さん婆さんを除いたほかの四人が、八方へでかけてまず客を捜す。つまり、死ぬほど人を怨んでいる人間、畜生ッ化けて出てとり殺してやりたい、などと怨み呪っている者を捜し、捜し当てたら、「炭屋河岸へおいで」と耳うちをするのである。

「やんぱち長屋の弥六の家へおいでなさい、ごくお安くあなたの怨みをはらしてあげます」

これを暗示的に何回も繰返すと、なにしろ相手は怨恨のためにとり乱し、精神の平衡を失っているので、ついふらふらと暗示にかかるらしい、開業五日めに早くも客がやって来た。……この応対問答も面白いのだが、話をいそぐ必要から略すとして、依頼は恋の恨み、先方は人の女房ということだけ記して置く。

六日め七日めと、客はしだいに殖えた。十日めには七人もやって来たし、さらに多くなるもようであった。

「当ったなあ、お染、見ろ、もうおめえ三両ちかく儲かったぜ」

「それっぱっちなによ、いまに千両箱を積んでみせるわ」

「この調子だと、そんなことになるかもしれねえ、だがなんだな、おらあつくづく思うんだが、世間にあずいぶん人を怨んでる者がいるんだなあ」