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アパートのさつじん
アパートの殺人
平林 初之輔
「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页
わたしはあの人の身体のためを思って見つけるたびにとめるんですけれど、どうしてもやまないんですね。
「ごめんなさい、ねえさん」とみさちゃんは眼に涙をためているので、わたしもかわいそうになってきました。「今日はこれで二度目なのよ、わたしもう生きてるのがいやになったから、どうなってもいいの」
「どうかしたんじゃないの、そんな乱暴なことをして、やけなんかおこしちゃ困るじゃないの? 明日は筑波山へロケーションに行くんでしょう。あんたが行かれなくなっちゃしょうがないじゃないの?」
「ねえさん」とあの人はやっぱり泣き声で言うのです。「わたしもう松木のおやじと別れるかもしれないのよ。だってあんまり図々しいこと言うんですもの、わたしの身体を一人で買い占めたような気になって、つけ上がるんですもの」
「どうしたの一体?」とわたしは、ベッドのはしへ、あの人と並んで腰をかけて、右の手であの人の肩をだいてきいてみました。
「今朝帰りがけにね、わたしにこのアパートを出てくれって言うんです。そして別に家をさがしてやるから、そこへ引っ越してくれって言うんです。ここは誘惑が多くていけないんですって、あのおやじより他の男にあっちゃいけないんですって? その代わり生活の方は不自由のないように保障するから、今後、他の男と秘密でもあったりしたら、ただではおか