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アパートのさつじん

アパートの殺人

平林 初之輔

「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页

青空文庫

植田「疑われると思ったものですから」

検事「貴女は、被害者山上が、神村を愛していると聞いて嫉妬を感じたんだろう。同性愛というものは、ある場合には異性愛よりも強いものだということを聞いているが、愛が強ければ嫉妬もまた強い道理じゃないか。嫉妬に眼がくらんで、女にも似合わざる大胆不敵な凶行を犯したんだろう」

植田「……」

検事「どうだ、だまっていてはわからぬではないか?」

植田「すっかり申し上げます。実は、わたしとみさちゃんとは、お察しの通りの仲で、二人で無断では結婚しまいと約束していたのでございます。二人はほんとうに愛しあっていたので、そのために、わたしにしても、みさちゃんにしても、異性に対しては、本気に愛しあうことができなかったのでございました。二人のうちのどちらかが、無断で、男と結婚するようなことがあったら、どんな復讐をしてもいいということにきめていたのでございます。ところが、今日、みさちゃんの口から、神村さんをほんとうに愛しているという告白をきいて、わたしは、もう理性を失ってしまったのでございます。

わたしは、もうくやしくて、くやしくて、思わず、あの人の咽喉首へしがみつきました。