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グッド・バイ
グッド・バイ
「朝日評論」1948(昭和23)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页
ひっかけるなどというのではなく、むしろ女のほうから田島について来たような形であった。青木さんは、そのデパートの築地の寮から日本橋のお店にかよっているのであるが、収入は、女ひとりの生活にやっとというところ。そこで、田島はその生活費の補助をするという事になり、いまでは、築地の寮でも、田島と青木さんとの仲は公認せられている。
けれども、田島は、青木さんの働いている日本橋のお店に顔を出す事はめったに無い。田島の如きあか抜けた好男子の出没は、やはり彼女の営業を妨げるに違いないと、田島自身が考えているのである。
それが、いきなり、すごい美人を連れて、彼女のお店にあらわれる。
「こんちは。」というあいさつさえも、よそよそしく、「きょうは女房を連れて来ました。疎開先から、こんど呼び寄せたのです。」
それだけで十分。青木さんも、目もと涼しく、肌が白くやわらかで、愚かしいところの無いかなりの美人ではあったが、キヌ子と並べると、まるで銀の靴と兵隊靴くらいの差があるように思われた。
二人の美人は、無言で挨拶を交した。青木さんは、既に卑屈な泣きべそみたいな顔になっている。もはや、勝敗の数は明かであった。