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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

」

とささやき、その声が自分でも意外に思ったくらい、いたわるような、あやまるような、優しい、哀調に似たものを帯びていた。

キヌ子は無言で立上る。青木さんも無言で、キヌ子のスカートなど直してやる。田島は、一足さきに外に飛び出す。

ああ、別離は、くるしい。

キヌ子は無表情で、あとからやって来て、

「そんなに、うまくも無いじゃないの。」

「何が?」

「パーマ。」

バカ野郎! とキヌ子を怒鳴ってやりたくなったが、しかし、デパートの中なので、こらえた。青木という女は、他人の悪口など決して言わなかった。お金もほしがらなかったし、よく洗濯もしてくれた。

「これで、もう、おしまい?」

「そう。」

田島は、ただもう、やたらにわびしい。

「あんな事で、もう、わかれてしまうなんて、あの子も、意久地が無いね。ちょっと、べっぴんさんじゃないか。あのくらいの器量なら、……」

「やめろ! あの子だなんて、失敬な呼び方は、よしてくれ。おとなしいひとなんだよ、あのひとは。君なんかとは、違うんだ。とにかく、黙っていてくれ。君のその鴉の声みたいなのを聞いていると、気が狂いそうになる。」

「おやおや、おそれいりまめ。