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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
延長にして一里はたっぷりあったと思われる、道々の花の景色、その間に千代子の味った不思議な感情、作者はそれをただ、夢とのみ、或は瑰麗なる悪夢とのみ、形容するの外はありません。
そして、遂に彼等が運ばれたのは、巨大なる花の擂鉢の底でありました。
そこの景色の不思議さは、擂鉢の縁に当る、四周の山の頂から、滑かな花の斜面を伝って、雪白の肉塊が、団子の様に珠数継ぎにころがり落ちて、その底にたたえられた浴槽の中へしぶきを立てていることでした。そして、彼女等は、擂鉢の底の湯気の中を、バチャバチャと跳ね廻りながら、あののどかな歌を合唱するのです。
いつ着物を脱がされたのか、殆ど夢中の間に、千代子等も華やかな浴客達に混って、快い湯の中につかっていました。不自然な衣服を着けていることが、寧ろ恥かしくなるこの世界では、千代子も彼女自身の裸体を殆ど気にしないでいられたのです。そして、彼等を乗せた裸女達は、ここでこそ文字通り蓮台の役目を勤め、長々と寝そべって、首から下を湯につけた二人の主人を、彼女達の肉体によって支えなければなりませんでした。
それから、名状の出来ぬ一大混乱が始ったのです。