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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
にすることが書いてありました。若しやと思って、夫人がこの島へ来られた日をくって見ますと、丁度この円柱の板囲いが出来上って、セメントを流し込み始めた頃であったことが分りました。実に安全な隠し場所ですね。あなたはただ、人のいない時を見はからって、足場の上まで死体を抱き上げ、板囲の中へ落し込み、その上から二三杯のセメントを流して置きさえすればよかったのですから。ですが、夫人の髪の毛が一本丈けコンクリートの外へもつれ出していたというのは、犯罪には何かしら思わぬ行違いが出来るものではありませんか」
もう廣介は、他愛もなくくずおれて、円柱の丁度千代子の血潮のあたりに凭れかかっていました。北見小五郎は、そのみじめな有様を、気の毒そうに眺めながら、でも考えていた丈けのことは云ってしまう積りでした。
「それを逆にしますと、つまりあなたが夫人を殺害しなければならなかったということは、とりも直さずあなたが菰田源三郎ではなかったことです。分りますか。この夫人の死体がさっき云った証拠の一つなのですよ。無論それ丈けではありません。私はもう一つ最も重大な証拠を握って居ります。多分もう御分りだと思いますが、それは外でもない菰田家の菩提寺の墓場にあるのです。