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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
俺として何処にやましい点があるのだ。それに又、菰田の遺族にしたところが、そうして、一度死んだと思った主人が活き返ってくれたなら、喜びこそすれ、何の恨みに思うものか、お前はそれをさも大悪事の様に思い込んでいるが、見るがいい、こうして一つ一つ結果を吟味して行けば、悪事どころか、寧ろ善事なのではないか」
そう筋道を立てて見ると、成程、条理整然としていて、実行上に少しの破綻もなければ、且は又、良心にとがめる点も殆どないと云っていいのでした。
この計画を実行するについて、何より都合のよかったのは、菰田源三郎の家族といっては、両親はとっくになくなって了い、たった一人、彼の若い細君がいる切りで、あとは数人の雇人ばかりなことでありました。尤も彼には一人の妹があって、東京のある貴族へ嫁入りしているのですし、国の方にも、そうした大家のことであって見れば、定めし沢山の親族がいることでしょうが、それらの人が亡き源三郎と瓜二つの人見廣介という男のあることを知っている筈もなく、どうかして噂位聞いていたところで、まさかこれ程似ていようとは想像しないでありましょうし、その上、その男が源三郎の替玉となって現れるなどとは、夢にも考える道理がありません。