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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
そして、経帷子で指環を小さくくるみ、懐中にねじ込むと、足許にころがっている、素裸体の肉塊を、さも面倒臭さ相に、手と足を使って、新しく掘った墓穴の中へ、落しこんだのです。それから、四這いになって、手の掌でまんべんなくその辺の地面を触って歩き、どんな小さな証拠品も落ちていないことを確めると、鍬をとって、墓穴を元々通り埋め、墓石を立て、新しい土の上には、予め取りのけて置いた草や苔を、隙間なく並べるのでありました。
「これでよし、気の毒ながら菰田源三郎は、俺の身替りになって、永久にこの世から消去って了ったのだ。そして、ここにいる俺は、今こそ本当の菰田源三郎になり切ることが出来た。人見廣介は、最早どこを探してもいないのだ」
前の人見廣介は、昂然として星空を仰ぎました。彼には、その闇の丸天井と、銀粉の星屑が、おもちゃの様に、可愛らしく、何か小さな声で彼の前途を祝福しているかに思いなされるのでありました。
一つの墓があばかれて、その中の死体がなくなった。人々はこの事実丈けで、十分顛倒するでありましょう。その上、そのすぐ隣のもう一つの墓があばかれたなどと、その様な御手軽な、大胆なトリックを弄したものがあろうなどと、誰が、どうして想像するものですか。