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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
◯十七節よりエリパズの論歩は一転する。まず言う「我れ汝に語る所あらん、聴けよ我れ見たる所を述べん、これすなわち智者たちが父祖より受けて隠す所なく伝え来りしものなり、彼らにのみこの地は授けられて外国人は彼らの中に往来せしことなかりき」と。これ祖先伝来のままにて何ら外国の影響を受けざる、雑りなき、純の純なる教を説かんとの意である。あたかもわが日本において、日本古来の道にして何ら外来思想を混えざるものと称せらるるものが、一部の人々にこの上なく(何ら格別の理由なくして)尊信せられおる如く、エリパズは祖先の教のそのままに伝え来りしものを、ただ雑りなき祖先の教であるというだけの理由の下に神聖視して、ここに説き出さんとするのである。
◯しかるにかくの如き前振を以て勿体らしく説き出されし真理なるものは、何ら貴きものでないのである。説く所は二十節より三十五節に亘るけれども、要するにこれ悪人必衰必滅という陳腐なる教義の主張に過ぎぬのである。「悪き人はその生ける日の間つねに悶え苦しむ……その耳には常に怖ろしき音きこえ、平安の時にも滅ぼす者これに臨む……彼は富まず、その貨物は永く保たず、その所有物は地に蔓延らず……邪曲なる者の宗族は零落れ、賄賂の家は火に焚けん」