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ヨブきこうえん

ヨブ記講演

内村 鑑三

丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页

青空文庫

十八節には「汝地の広さを看究めしや、もしこれを尽く知らば言え」とある。これまた地の広さの知られざりし時においては、人智の極限を有力に示す語である。二十四節には「光明の発散る道、東風の地に吹きわたる所の路はいずこぞや」とある。光は東より忽ち全視界に広がり、東風は忽ち吹き来って地を払う。光と風の通り来る東の路はいずこぞ、誰人もこれを知らずというのである。その他の各節いずれも同一意味を伝うるものであって、自然界の諸現象を起し得ずまた究め得ざる人間の無力を指摘して神の智慧と力とを高調したのである。

◯次に注意すべきは三十一、二節の有名なる語である。

汝昴宿の鏈索を結ぶや、参宿の繋縄を解くや、汝十二宮をその時に従いて引き出だすや、また北斗とその子星を導くや。(改訳)

邦訳聖書には各成句の結尾を「得るや」と訳してあるが、むしろ右に掲げし如く訳すべきものである。空気清澄にして夜ごとに煌々たる満天の星辰を仰ぎ得たるアラビヤ地方に住みて、ヨブはいかに天を仰いで星を歎美しつつあったことであろう。隊商に加わりて砂漠の夜の旅を続けし時の如き、彼の心は天に燦く星の神秘に強く打たれたことであろう。