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なのかななよ
七日七夜
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1951(昭和26)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,818 字 · 36 页
昌平はぐっと唾をのみながら云った。
「私の飯はどうしたんだ、まだなのか」
下女たちは一斉に箸を止め、黙って顔を見合せた。
――忘れたんだな。
昌平はそう云おうとした。そのとき下女の一人が、「奥さまに伺がって来ます」と云いさまばたばたと廊下へ駈けだしていった。
「支度が出来たら知らせてくれ」
どなりたいのを抑えて、昌平は自分の住居へ戻った。
「奥さまに聞いて来る、か、……するとおれは、奥さまのお許しがなければ、飯を食うこともできないわけか」
昌平は泣きたいような心持になった。
旗本で三千石といえば、それほどむやみに貧しくはない、長兄の安左衛門は勘定奉行の勝手係を勤めているので、役料のほかに別途収入もかなりある。にも拘わらず吝嗇漢というか、次弟を町奉行所の書記に出し、三弟は家扶の代役に使い、四番めの昌平などは、
――本田の家には類のない能なし。
と云って、殆んど下男同様に扱かわれた。尤とも下男は給銀を取るが、昌平はときたま蚤の眼脂ほどの小遣を貰うだけだから、実質的には下男に及ばなかったかもしれない。
――外へ出るな、みっともない。
――客が来るんだ、すっこんでいろ。