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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

そしてこの考え方が、今日の科学なき日本をつくったのである。

科学という言葉は、日本では非常に誤った意味に解されている傾きがある。戦争中に東条首相がよく使った言葉、即ち科学の力をもって不可能を可能ならしめよという言葉が、科学という学問の本質を、非常に誤って世人に伝えたのではないかと思われる。もちろんそれは東条個人の問題ではなく、東条をしてそういう言葉をいわしめた背景、即ち日本の知性の水準が、問題なのである。

科学は本来、不可能を可能ならしめる学問ではない。不可能を可能ならしめるものならば、それは魔術である。魔術は科学と正反対のものである。その意味において、もしこの流儀の言葉を使うならば、科学の力をもって可能を可能ならしめよといわなければならないのである。ところが、この可能を可能ならしめることが、実は非常にむつかしいのであって、それは良識の力をもってはじめて出来ることなのである。そういう意味では、科学の一番よい定義としては、良識の精髄というのが、最もよくその本質をいい表わしているであろう。

洪水の科学的研究といっても、何も微分方程式や、精密機械を使うことばかりとは限らない。