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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

湯川さんから五年前、一九二九年の王立学会の討論会で、ラサフォード卿が提出した原子核構造は、α粒子と陽核子とから成っているものであった。ピンポンの球をα粒子に見立てて、それをいくつか積み重ねて、その配置の恰好から、アストンの質量偏差を説明しようと試みる極めて原始的な仮設であった。ラサフォード卿自身、僅か五年後に、あのピンポンの球が、湯川さんの中間子理論にまで発展しようとは思わなかったことであろう。こういう近代物理学の世界史を背景にして、初めて湯川さんの仕事の価値が理解されるのである。

もっともピンポンの球から直接中間子理論へ飛躍したわけではない。その間には、量子力学の数学的発達、放射性物質のβ崩壊に伴うフェルミの理論、原子核についてのボーアの仮説など、湯川さんの理論に達するまでには、たくさんの足場があった。そして物理学史の上では、丁度いいところに、中間子理論がはめ込められている。しかしそれはあとから歴史的に見ていえることであって、身をもって前線に立っている人には、その現在における全体の主流はなかなか見えないものである。今日になって今度の戦争の後をふり返って見て、いろいろなことをいうことはやさしいが、戦争前や戦争中は、たいていの人が五里霧中になっていたのと同じことである。