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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

工業学校の窯業科から、大学の物理学料へというのは、少し無理なコースである。

中学校は型の如く、無事卒業した。その頃になると、一人で家業をやっていた母が、こんな商売をやってもさきの見込みがないから、ずっと大学までつづけたらよかろうといい出した。中小業者の没落を、あの時代から見通していたのであるから、なかなか傑い母であった。これは冗談でなく、その後も時々ちゃんとした見通しをつけるので、感心したことがある。

あの頃の高等学校の入学試験は、七月にあった。それで三月の末に中学を出てから、家で商売の手つだいを少ししながら、受験準備を始めた。といっても今日のように受験参考書なども揃っていなかったので、当時評判のよかった『考へ方』の本だの、つれづれ草の註釈本だのを註文して買って、それをぼつぼつ読んでいた。しかし試験には美事に落第した。

試験に落第することは、決して名誉な話ではないが、そうかといって、人生の上において損をしたことになるとは限らない。落第した当時は大いに悲観もするが、一年間の浪人時代に得たいろいろな経験は、人生勉強という意味で、大いに得るところがあった。