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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
そのうちに終戦の日を迎えて、鎌倉も無事に残り、私たちのニセコの研究ももう用の無いことになってしまった。
ところが縁というものは不思議なもので、この話のあった有島農場の中に、私たちの新しい研究所の一分室が出来ることになった。ニセコの研究施設が農業物理の研究所として更生し、この有島農場の中でも、来春からは春先雪を早く消したり、水田の水温上昇を試みたりするような研究が始められることになった。その敷地の入口には、有島さんの石碑が建って居り、里見さんへ勧誘の手紙を出した老管理人には、私が厄介になることになった。
有島さんは札幌に住んでいて、ここの農場には時稀見廻りに来るくらいだったらしい。よく馬に乗って農場を見廻って居られましたということであった。先日雪の日に訪ねて行ったら、管理人の老妻が熱い澱粉を御馳走してくれた。そして「有島さんはよく風邪をひかれましてね。冬など御見えになると、いつもこの澱粉をかいて差し上げました。これは温まると言って大層喜ばれまして」というような話をしていた。
『カインの末裔』に出て来る景色は、この土地のことである。「寒い風だ。見上げると八合目まで雪になつたマツカリヌプリは少し頭を前にこごめて風に刃向ひながら黙つたまま突立つてゐた。