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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
と里見さんは、ちょっと心が惹かれた様子であった。
開放以来もう二十五年も経っているので、普通なら前の地主のことなどすっかり忘れてしまっている頃である。それにこういう手紙を寄こしてくれるのは感心な話である。里見さんもその心持を喜んで居られるらしい。ただ余りひどい田舎へ引き込んでしまって、文化的なことから全然縁が切れてしまうのも淋しいし、いったい狩太というところはどんな所なのかという話であった。武郎さんの居られた頃一度行ったことはあるがということで、三十年前の北海道の田舎を考えられたら、もっともな心配である。
その頃とはもうすっかりちがって、この二三年来私たちは、あの近くのニセコの山頂に三千三百ボルトの高圧線をひき上げて、百馬力の電動機を二つも廻しているし、そして狩太をその研究所の根拠地にしているという話をしたら、大分驚かれた様子であった。そして手廻の荷物だけでも何とかなるようなら、一つ考えてみようかという話になった。
北海道へ帰って、終戦直前の切迫した雰囲気の中で、今から考えてみれば果無い努力を続けているうちに、鎌倉での話などはつい忘れてしまった。