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ぼうれいホテル
亡霊ホテル
山本 周五郎
「新少年」1937(昭和12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,706 字 · 20 页
身を跼めるようにして、博士から先にその抜穴へと入った。――入口は狭いが、入った処は梯子口になっていて、楽に立ったまま下りられる。二人は拳銃を握ったまま静かに、一段一段跫音を忍ばせながら下りて行った。
梯子を下りきった処に扉があった。博士は扉へ耳を当てて暫く様子を窺った後、そっと押明けて中へ入った、とたんに、
「あ、ドーリイ」
低く叫びながら、伊藤青年が博士を押除けて中へ跳込んだ。――正にみどり、妹のみどりが、狭い物置部屋の中に椅子へ堅く縛りつけられたうえ、無残に猿轡を噛まされていたのである。
「待ち給え!」
駈寄ろうとする伊藤を、何故か博士は急に押止めた。
「まだ手を触れては不可ん」
「だって先生こんなに縛られて……」
「宜いから待ち給え、妹さんにはお気毒だが、もう数時間この苦痛を堪忍んで貰わなければならぬ、この事件は生やさしい問題ではない。国家の重大な機密に関係しているのだ、――斯う云えば恐らくみどりさんも暫しの苦痛を忍んで下さるだろう」
椅子に縛られたまま是を聞いたみどりは、雄々しくも眼を輝かせながら、力強く頷いてみせるのだった。
「みどりさんは承知して呉れたよ。