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ぼうれいホテル
亡霊ホテル
山本 周五郎
「新少年」1937(昭和12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,706 字 · 20 页
深夜の探検
「先生まで亡霊を怖がるんですか」
「君だって怖くない事はあるまい、――が、兎に角それに就て少し考えている事があるんだ、まあ……後で僕の部屋へ来給え」
二階の階段で二人は別れた。
伊藤豊治は三階へ上って、扉の鍵を(それはいつかもうちゃんと閉まっていた)開け、中へ入って電灯を点けた。――そして、部屋を温めるために煖房器の栓を捻った時、卓上電話がけたたましく鳴りだした。受話器を取ってみると、牛込の母からだった。
「ああお母さんですか」
「豊治かえ、東京へおいでだってね、御用が済んだら牛込へも寄ってお呉れよ」
「ええ一週間ほどしたら伺います」
「待ってますよ。それからみどりは未だ其方にいるかえ、余り帰りが遅いからどうしたかと思って」
「ドーリイが来たんですか」
「行っていないのかえ」
「否え、――尤も今まで此室を留守にしていましたが、些っと帳場へ訊いてみましょう」
そう云って伊藤青年は呼鈴を押した。
深夜の探検
「ふーむ」
博士は深く眉を寄せた。
「母の話では、新しいシャツやズボン下を持たせて寄来したと云うんです。片町の村上という友達の家へ問合せたら、六時頃に出たそうですから、どんなに遅くとも来ない筈はないと思います」