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にんげんせいかつのむじゅん

人間生活の矛盾

丘 浅次郎

「中央公論」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页

青空文庫

退化の度を増して、終に今日までに達したのである。以上述べたとおりであるから社会本能や階級本能の発達の程度を標準として測ると、人間の過去の歴史は、初めは上り坂で後には下り坂になり、その中間にはいくぶんか、やや平らな所があって、全体の形はほぼパラボラに似ていたろうと思われる。今日の人間は遺伝によって、上り坂時代の性質をなお相応に備えて居りながらも、下り坂時代の新しい性質を重ね備えているゆえ、同一人が考えること、なすことの中にも、互いに矛盾する分子が含まれてあるを免れぬ。また、初め発達した本能が後に退化する程度は、変異性によって、一人一人に違うから、これらの人々がめいめいに考えること、なすことの間にははなはだしい矛盾が生ずるのは当然である。上り坂の頃には社会本能や階級本能が発達したために、人間の考えることも、行なうこともすべて、それに基づいていたが、下り坂になってからは、これらの本能が退化して、その反対の自己を中心とする本能や、自分の頭の上に他人を戴くことを潔しとせぬ本能が芽を出し、そのために、人間の物の考え方がいちじるしく変って来た。ただし、誰もの考えが歩調を揃えて変化して行くわけではなく、方向だけは同じであっても遅速には非常な相違があって、今日でもなお、階級本能を多量に備えている人もあれば、これを大分失うた