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にんげんせいかつのむじゅん
人間生活の矛盾
丘 浅次郎
「中央公論」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页
八
しかしてその紛擾は、階級本能の退化とともに、今後も次第に殖え、解決もだんだんむつかしくなり行くように見える。
八
以上述べたとおり、今日の人間生活には、限りなく矛盾が含まれてあるが、これは何と解釈すべきであるか、他の人々の考えは知らぬが、私一個の学説によれば、これは当然かくあるべきはずで、実は矛盾でも何でもない。矛盾の生ずべき理由がないのに、しかも矛盾が生じたのならば、これこそ真の矛盾であるが、矛盾の生ぜざるべからざる原因があって、その当然の結果として、矛盾が生じたのならば、これは少しも矛盾ではない。前に述べたとおり私の学説によれば、人間の過去の歴史には社会本能と階級本能とが発達した上り坂の時代と、その退化した下り坂とがあり、現今はその下り坂の途中にあってさらに下に向って降り行く所である。今日の人間をかような歴史の所有者として観察し、本能退化の程度が各個人によって一様でないことを考慮すると、その生活に現われる数多くの矛盾は、いずれもかくあるべきはずで、とうてい避けることのできぬものであったことが明らかに知れる。
昔からいつの代にも世は澆李であるとか、世が末になったとかいい来ったが、私の学説によればこれは実際をいうたもので、けっして厭世家の感傷的な嘆息のみではない。