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にんげんせいかつのむじゅん

人間生活の矛盾

丘 浅次郎

「中央公論」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页

青空文庫

三

適応の性質を備えていねば生きてはいられぬゆえ、いかなる動植物でもこの性質を持たぬものはないが、これが自然淘汰説で面白く説かれたゆえ、この説はしばらくは極度に持て囃され、生物進化の現象は、この説のみでことごとく説明せられるというて、自然淘汰万能を唱える学者までができた。しかし何ごとも極端に走ると、かならず反対者が現われるもので、自然淘汰説に対しても、その後種々の攻撃の声が起り、何か新しい学説が発表せられるごとに自然淘汰説は根底から覆されたという評判が立ち、アメリカの新聞などで見るとすでに何回葬り去られたか解らぬ。しからば、この説は今日ではいかなる状態にあるかというに、イギリス、フランス、ドイツなどの代表的動物学者の最近の著書や講演から察すると、事の大小軽重を慎重に吟味して説を立てる落ち付いた学者たちは今でも充分にその価値を認め、これを捨てては、その代りとなるべき学説はないと考えているようである。

三

私は今から二十二年前に著した『進化論講話』にも書いて置いたとおり、自然淘汰説をもってもっとも真実に近い仮説と認め、自然淘汰をもって、生物進化の起った原因の中のはなはだ重大なものと考えている。