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にんげんせいかつのむじゅん
人間生活の矛盾
丘 浅次郎
「中央公論」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页
しかも税を取りに来るときには、これは君らの選んだ代議士が可決したことであるから、君ら自身が可決したのも同じである、ぐずぐずいわずに早く出せというて請求する。運動費に何万円も費すところを見れば、当選してからかならずその何倍かの儲けがあるものと思われるが、かような自己本位的の行為は、社会本能がよほど退化した後でなければとうてい誰にもできぬことである。
社会本能が未だ退化しなかった頃には、一国内は真に挙国一致で愛国心が充満していたろうが、この本能が退化し始めてからは、愛国心も次第に変化して、本能に基づいた無意識的のものからだんだん智力に造られた意識的のものに移って来た。つねには容易に持ち上らぬ箪笥が火事のときには楽々と運べるごとく、非常の際には思いがけぬ力が出るもので、戦争でも始まると、今まで隠れていた社会本能がにわかに働いて、国家のためには身命を擲つ特志家が幾人も続出するが、かようなときでさえ、大多数の人々は、わが国が敗けては自分が困る、それゆえ是非ともわが国を勝たせねばならぬと、心の中で意識的に理窟を考えた結論の愛国心より外は持たぬ。しかして平時には、社会本能の退化につれて頭を擡げ出した自己本位の本能が、無意識ながら有力に働くゆえ、めいめいが意識的に考えることも、皆この本能の命ずるところに従うてことごとく