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にんげんせいかつのむじゅん
人間生活の矛盾
丘 浅次郎
「中央公論」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页
何ごとにも自国本位であったのが、少しずつ国際関係をも尊重するようになり、終には、国などという面倒なものは廃して、誰も彼もが単に世界人となった方がよろしくはなかろうかなどと考える者までが生ずる。しかしながら、現在の世の中には、未だ民族の区別もあり、国の区別もあって、強い国から侮辱や圧迫をこうむることも絶えずあるから、世界人では安心ができず、やはり国を強くして置かねばならぬとも考える。この点においても思想が二派に分れて互いに衝突するを免れぬ。
国際の関係が多くなり、広くなるにしたがい、国際間の相談もたびたび開かれ、国際間の約束もしばしば結ばれる。万国為替というような便利なものができて、外国へ行っても電報一本で何千円の金でもすぐに受け取れるから、地球上のどこへ行っても何の不便もなく、あたかも世界中が一か国になったごとくに感ずることもある。これから推して世界が真に一国になってしまうことも不可能ではない。かつ実際一か国になってしまえば、戦争などという嫌なものがなくてすむであろうと考える人もできる。しかしかような便利な方法も元来が相互の利益のために智力で工夫したもので、その点では汽車や汽船の発明と同じ種類に属するから、けっしてこれをもって、国と国とが仲好しになった徽しとみなすことはできぬ。