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にんげんせいかつのむじゅん
人間生活の矛盾
丘 浅次郎
「中央公論」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页
千里の駒も一生肥桶を挽かされては、その天分を発揮することができず、自分より劣った者の出世を眺めながら我慢していなければならぬ。ショーペンハウエルは大学の教授を務める哲学者に帝大哲学者という綽名をつけて、その御用学者ぶりを盛んに罵倒したが、大学の教授に滅多に天才のないのは右のような理由によるらしい。研究にもっとも便宜のある位地を凡庸の者が占め、優った者がそのため便宜のない所で苦しまねばならぬのは一つの矛盾であるが、右のとおりの理由がある以上は、如何ともいたし方がなかろう。
階級本能の退化には種々の程度があり、一方には未だに目上の者を崇拝せずには居られぬ人があるかと思えば、また他方には、いかなる者でもこれを軽蔑せずには置かぬ人があるが、大多数の者は今日その中間に位する。しかして、これらの人々の階級本能の退化は、年々少しずつその度を高めて行くようである。その結果は毎日の新聞紙上に出てくるとおり、下の者が上の者を敬わなくなることで、けっして昔のように何ごともご無理ごもっともでは通さず、少しでも自分らの得にならぬことにはたちまち同志を集めて反抗する。子は親に対し、生徒は教師に対し、傭人は主人に対し、労働者は資本家に対して一歩も譲らぬ態度を示し、そのため、紛擾の絶える時はない。