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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
「おやじの事だって、長男であるぼくとしてはしょッちゅう気にかかっているし、君達におっつけておいて、それでいい気でいる訳じゃ毛頭ないんだが……」
傍で、むっつりとめしを喰っていた妹が、そのときガタンと飯びつの蓋をして、台所の方へ起っていったのを、鷲尾は酔ってる頭にピンと感じたが黙っていた。
「いや、わしらにゃ恰度子供も出来まッせんけん、なんのおとっつぁん一人くらい……」
人の好い大工は、べつにとりなし顔でもなくそう鷲尾に云った。
「義兄さんは学者じゃけん、まァ一つ兄弟じゅうば代表して名前ばあげて下はりまッせ」
「ありがとう――」
鷲尾は苦笑どころでなく、あらたまった気持で盃をもらいながらこたえた。
「いいとも、ぼくが君たちを代表してそのゥ、名前ばあげるよ」
しかし父親はポツンと淋しそうに肩をすぼめていた。こんなときの癖で、反向けた顔のどッかをボンヤリと見つめているのが、まるで子供のようだった。鷲尾は何かハグらかすようなことでも云わずに居られない気がした。
「それにネお父っつぁン、なかなか老人は東京に居つかないんだよ」
皺くちゃな横顔を追いながら、そんな事実を憶い出しながら云った。