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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

自分は夫に追ッつかなければならぬと考えているのだが、風が激しくてどうにも駈けられない。モガいてもモガいても足は同じところを堂々めぐりしているのだ。気がつくと仲間達の姿はどこにも見えず、広い原ッパに自分一人だけが取り残されていた。――オーイ――とはるか遠くから誰かが呼んでいる。「オーイ」と呼び返すが、先方の声はだんだん遠くなってしまい、四辺にはいつの間にか犇々と、おそろしい牛とか馬とかの顔をした人間の群が自分を取り捲いている。その人間の顔は鷲尾が子供のころ、よくお寺で見かけた「地獄の絵」にある鬼共と同じだった。――オーイ、子供なンか棄てッちまえ――とだれかが呼んでいる。彼はそうしようと思う。そして子供の手を突離して駈け出そうとする、が可怪しなことに死んだ筈の痩せ青ざめた子供達が、彼の先へ先へとコロがって足許を塞いでしまう。上の男の子のゴム長靴を穿いた足や、三番めの女の児のお襁褓をあてた蜘蛛のような尻ッぺたやが、風にふかれる紙片のように、コロコロところがってゆく――。そンな夢だった。

ツマらない眠気から覚めようと、鷲尾は自分の頭をコツコツたたいたり、白湯を二三杯のんでみたりした。