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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
「公休たい、月に一度の公休たい」
………哀れなるかな少年車掌――と、おしまいの方は唄のように云って弁当箱をカチャッとおいてちょッとも哀れそうでない笑い声をたてた。病人の顔をのぞいて話しかけたり、綻びたズボンのポケットから「絵本」を出してくれたり、汚ない室ン中が、急にパッと明るくなッてしまって、鷲尾の面喰った気持はキョトキョトしていた。
「そりゃ気の毒だった、めしはも少しあとでもよかったのに……」
そういうと弾ずんだ声が、くるッとふりむいた。――
「冗談ば云いなはりますな、公休日に寝とられるもンかいた」
「あッはは、そうか、そうか」
工場時代の自分を思い出して鷲尾も笑った。
「きょうは正午まで講義録読んで、それから床屋へいって、風呂にいって、活動写真ばみて……」
低い鼻と、膨れた赤い頬っぺたをもった若者は、五本の指で足りずにモ一つの掌をひろげて数えたてたが、またフイと云い出した。
「あの、『ロシアの五ヶ年計画』ば聴かしてくだはり、わしどんが仲間で、そのこつでモメとったい」
「何だ。モメとるとは?」
弟は彼ら仲間の共済会で、この事で一方は新聞記事的な……と、一方はそうでないのとが対立していることを話した。