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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

というと、弟はわるびれずに

「はァい、黙っとる」

と答えた。「電気学講義録」がポケットから喰み出している制服オウバアの襟の中で、茶っポい一重瞼の眼がノンキそうにまたたいているのだ。

彼は不思議な気がした。こいつもいい加減のおッちょこちょいかも知れんと思った。しかし訊ねれば、びっくりする程批判的に答えるのである。たとえば彼らの共済会に入ってる従業員は、その五割までがフラフラで、二割は反動、更に二割が世の中が厭になったニヒリスト、あとの一割が積極的でないまでにも真面目な分子だという風に答えた。その一割も従業員では勢力のない若者ばかりだと。その批判は冷酷な程客観的だが、しかもこの若者自身にはちょッとも悲観的なところがなかった。癪にさわるほどノンビリしていると思われた。

「でも、ボンヤリしてりゃ益々真面目な分子は減ってゆくじゃないか?」

鷲尾が畳みかけると、微笑っている無邪気そうな眼の中を、おそろしく老せたものが一瞬キラリとよぎったと思われた。

「ばッてんが、負ける戦争は出来んもン……」

鷲尾はハッとした。何か虚を衝かれたように慌てだしながら、ノメるような勢いで、