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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

彼は「合法的人物」で、法律に触れてる訳でもなンでもなかったのだ。しかしそれと入れ違い位に警察の男がやってきた。

「よウ、しばらくだね」

馬糞に汚れた県道筋を、一直線にとんできた自転車は、軒先にたっている鷲尾のまえで輪を描いてとまった。

「こんどは…………という訳かね」

軒先に自転車ごと入りながら、ブラシのような口鬚と、ブツブツのある肥った顔の四十男は、意地の悪いニヤニヤ笑いをした。

「お阿母の一周忌だよ、ちゃンと届けたじゃないか」

鷲尾はツイむきになったが、自転車の男は訳のわからぬ肯き方をしながら、煙草の火を点ける間もちらッちらッと、彼の肩越しに家ン中をのぞきこんでいた。

「女房子供づれだから、今度は勘弁してもらいたいな」

だんだん平静を取戻して冗談笑いにしながら云った。

「たかが一小説かきじゃないか、あンまり眼の仇にするなよ」

「………………」

相手は「ウフン」と笑っただけで、暫らくどっちも黙って寒い風の中にたっていたが、やがて自転車を向け換えると、その男は苦笑した顔をそっぽむけたままで呟いた。

「しかし何しろ、君ァこの土地じゃその方の草分だからな」

「………………」