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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

唯円 いいえ。あなたからのお使いと聞いて喜んで参りました。何か御用でございますか。

善鸞 いえ。用と言ってはありません。私はたださびしくってあなたに会って話したかったのです。

唯円 私もあなたに会いとうございました。

仲居 (新しい杯を持って来て唯円の前に置く)どうぞお持ちあそばしませ。

唯円 (もじもじする)私は飲みませんので。

仲居 でも一つ。

善鸞 いや、この人にはすすめてくれな。(唯円の不安そうなのを見て)私たちは少し話があるから皆あちらに遠慮してくれ。

仲居 かしこまりました。では皆さん。

一同二人を残して退場。

善鸞 このような所へあなたを呼んですみません。それに私はお酒に酔っています。

唯円 私はかまいません。私は喜んで来たのです。

善鸞 私はさびしかったのです。だれも私の心を理解してくれる人はありません。私はこうして酒を飲んでいても腹の底は冷たいのです。私は苦しいのです。私はこのあいだあなたと会った時から、親しい、温かい気がするのです。私の胸の思いをすらすらと受けいれてくださるような気がするのです。あなたと向き合っていると、いろいろな事が聞いていただきたくなるのです。