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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
(肩をそびやかすようにする)
かえで 私はなんだかうれしくなって来ました。(ほれぼれと唯円の顔を見る)ほんとうにいつまでもあなたのおそばにいられるようにしてくださいよねえ。
唯円 きっとそうしますよ。
かえで おゝ、うれしい。そしたら私あなたを大切にしてよ。
この時夕暮れの鐘が殷々として鳴る。
かえで (立ち上がる)私きょうはもう帰らないといけないのよ。
唯円 も少しいらっしゃいよ。
かえで でもおそくなると困るのですもの。
唯円 ではちょっとの間。あの夕日があの楠の木の陰になるまで。私は帰しませんよ。(さえぎるまねをする)
かえで (すわる)私も帰りたくなくてしょうがないのよ。
二人しばらく沈黙。
唯円 かえでさん。
かえで はい。
唯円 かえでさん。かえでさん。かえでさん。
かえで まあ。(目をみ張る)
唯円 あなたの名がむやみと呼んでみたいのです。いくら呼んでも飽きないのです。
かえで (涙ぐむ)私はあなたといつまでも離れなくてよ。墓場に行くまで。
唯円 私は恋の事を思うと死にたくなくなります。いつまでも生きていたくなります。
かえで でも人は皆死ぬのね。このたくさんな墓場を御覧あそばせ。