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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
そして幾度もありがたいといっていられました。
浅香 このあいだの夜はいい都合だったのね。私はふと門口に出て見たら、あのかたが月あかりのなかをうろうろしていらっしゃるのよ。私はいとしくて涙が出てよ。駆けって行って、かえでさんに何か用事はありませんかと言ったら、どうぞこれを頼みますと言って手紙を渡して、あわてて、向こうへ行っておしまいなすったわ。
かえで あの時あなたに会わなかったら、夜通しでもうろうろしていただろうと言っていらっしゃいました。
浅香 あのかたなら、そうしかねなくってよ。(ほほえむ)だけど私はいいお役目が当たったものね。
かえで まあ。あんなことをおっしゃる。(ほほえむ)
浅香 (急に暗い顔をする)これから後はどうして会う気なの。
かえで (心配そうな顔をする)さあ。私はそれが心配でならないのよ。おかあさんは今晩の権幕では、もうちょっとも外へは出してくれますまい。といって唯円様は宅へ来てくださる事はできないのだし。
浅香 お銭の都合をつけなくてはいけますまい。
かえで 唯円様はいくらお銭があっても、私はあのかたにだけはお銭で買われたくはないのよ。私はお客とは思いません。